人間が生活を営む居住地の分布は気候や地形の条件に大きく影響される.例えば,穀物の栽培限界である年平均気温が0℃を下回る寒冷な地域や,年降水量が100 mm以下の乾燥地域,急傾斜の山岳地域では一般に居住地の立地は困難である.しかしながら,居住地の分布と自然条件の関係は詳しく検討されていない.その理由として,自然環境が良い場所に人が集まりやすいことが自明とみなされ,詳しい検討の必要性が求められないことなどが挙げられる.しかし,最近GIS及びデジタル空間データの普及・整備によって,人口の分布と自然環境との比較検討が容易にできるようになった.
【標高】(m) 【傾斜】(度) 1位 :安曇村(1526) 1位 :一宇村(.878) 7位 :草津町(1189) 1位 :上村(.787) 10位 :芦安村(1103) 6位 :大塔村(.777) 12位 :嬬恋村(1095) 10位 :御蔵島村(.773) 21位 :山中湖村(1019) 12位 :柳谷村(.771) 27位 :軽井沢村(994) 27位 :五木村(.761) 46位 :荘川村(928) 29位 :泉村(.760)
標高が高く,傾斜が大きい場所に居住地が立地している所は,山間部における観光業や伝統的な林業や畑作が盛んな地域であり,特徴的な経済活動と密接に関連している地域である.また,首都圏の住宅地拡大に伴う山間部の土地開発によって,居住地の立地としては悪条件と考えられる場所に,居住地が進出していることも考えられる.
東京大都市圏における駅別乗降者数のデータを、駅前の地価や駅周辺 半径2kmのバッファ人口と比較してみた。特異な例として、駅周辺の 人口が少ないのに乗降者数が多い駅(羽田空港、成田空港、新木場=空 港、埋立地)や、駅前の地価が高い駅(二重橋前、大手町、日比谷=都 心部)を抽出できた。なおその逆の例として、駅周辺人口と比較して乗 降者数が少なく駅前地価の低い駅には、銚子電気鉄道の仲ノ町駅などが 該当した。これらの結果は、都市機能や交通網の配置が人口の分布に、 偏差を生じさせているためであると考えられる。