研究紹介

表記のリーフレットが完成しました。
地上レーザ測量等による津波の痕跡調査に関する活動報告です。

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地形変化分析

東日本大震災に関する救援・復興支援室の登録プロジェクト一覧表
> 防災 > 【地形変化分析】
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/recovery/project_list.html


主に学生が中心に行っている研究プロジェクトの紹介です。
中央のStartを押したあと、ウィンドウ下の←→矢印で進めます。

ArcGIS Online にて当マップを公開しました。(2015年3月13日)

※以下は、古い情報になります。


本研究室では、以前、タイトルにあるようなインターネットGISサービスを公開していました。

しかしながら、サーバの老朽化により、データベースの公開が困難となっておりました。

今回、上記サービスで提供していたデータのうち一部を、本ウェブサーバ上に新たなWebGISサービスとして試験的に再公開します。
ウェブブラウザ上に展開されるWebGISは、以下のURLからご覧になれます。

対象は日本の古水文・古環境データ、扇状地、露頭です。ただし、写真データは含まれておりません。背景地図にはマイクロソフト社Bing Mapsを利用しています。
個別のデータを地図上で確認するには、右上の方にあるinfoボタン(i)を対象の点の中心に正確に合わせてクリックする必要があります(やや慣れが必要かもしれません)。
画面左上の方にあるSearchからは、属性検索が可能となっております。

これらのデータのWMS配信も行っております。
http://geosphere.csis.u-tokyo.ac.jp/gis/services/phd/japan_palaeohydrology_database/MapServer/WMSServer
これを用いると、ArcGISをはじめ、デスクトップGISに個別のデータを表示させることも可能です。

なお、本サービスは試験的に公開しているものであり、予期せず停止する可能性もありますので、その点何卒ご承知のうえご利用下さるようお願いいたします。
本データの詳細については、下記文献もぜひご参照ください。
参考文献

  1. 小口 高・斉藤享治・原 美登里・門村 浩・林  舟(2000):扇状地データベース−インターネット・マップ・サーバーによる地理情報の提供−.地学雑誌,109,120-125.[PDF]
  2. 小口 高(2005):研究・教育用ツールとしてのインターネット・マップ・サーバーの公開.東京大学空間情報科学センターDiscussion Paper Series,No. 65,27-34.[PDF]

JSTによる戦略的国際科学技術協力推進事業の一環で、震災関連研究を対象とした「国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)」に、
「東北地方太平洋沖地震による津波の陸地における挙動と水流による地形変化の研究」(日本側研究代表者:小口 高)が2011/9/29付で採用されました。
http://www.jst.go.jp/pr/info/info833/besshi1.html(14番目)

アメリカ合衆国のNSFとの共同支援としてのプロジェクトとなります。
東北地方の津波による地形の変化を定量、モデル化する研究で、既に現地調査も始まっております。

日本地球惑星科学連合2011年大会の「ソーシャルメディアと地球惑星科学」で本研究室から2件、ポスター発表を行いました。
ここでは、その二つのポスター画像をご紹介します。


地球惑星科学の社会への普及に対するツイッターの貢献事例
小口 高・近藤 康久・早川 裕弌

Twitterが地球科学をはじめ、考古や建築などさまざまな分野の研究者をつなぎ、縄文海進に関するある誤解についての指摘に役立ったという事例です。科学と社会をつなぐ架け橋としてのソーシャルメディアの役割を議論しました。


地球惑星科学関連の大学や学術団体におけるソーシャルメディア利用の現状と問題点
早川 裕弌・小口 高

政府や自治体などの公共機関でのTwitterやFacebookの利用が広まるなか、大学や学会ではどのような動向であるのかを調査しました。やはり日本の学会はかなり出遅れているようですが、現状で大学レベルでも公式な利用が広まりつつあるという事実は、ソーシャルメディア利用の発展の可能性を示唆しています。

以前の記事 http://oguchaylab.csis.u-tokyo.ac.jp/news/2010-03-1188.html に関する補足です。
この論文を簡潔にまとめると、以下のようになります。

「地形」は我々の足元をなす地球表層の重要な要素であり、地殻変動や地質、気候などさまざまな条件によって侵食・堆積を繰り返しつつ変化します。岩盤河川は山地の侵食地形を代表する一つですが、本研究ではこの岩盤河川地形の平面形に対する気候、とくに台風による豪雨頻度の影響を空間定量的に解明しました。

対象とした岩盤河川は日本列島および台湾、フィリピン等を含む、西太平洋地域の低緯度から中緯度まで広範囲にわたります。まずはスペースシャトルによりレーダー計測された全球数値地形モデルに基づき、地理情報システム(GIS)を用いて穿入蛇行する山地岩盤河川の蛇行度の定量化を行いました。次に日本列島において詳細な地質区分と、日雨量50-mm以上の豪雨頻度との対応をみると、強度の低い岩石であるほど河川の穿入蛇行は大きくなるものの、どの地質区分においても、豪雨頻度が高くなるほど蛇行度も大きくなる傾向がみてとれました。さらに地理空間的に平均した蛇行度は、南北方向に比較すると亜熱帯地方で最大値を示し、赤道および中緯度に向けてそれぞれ減少することがわかりました。これは、台風の経路データからもたらされる台風襲来頻度と一致する傾向であり、地形と気候との相関が空間定量的に示されたといえます。

meander bend at the mid oi river, shizuoka
[ incised meander – 穿入蛇行する大井川 ]

2,010年9月19〜21日に開催されたG空間EXPOに出展しました。
本研究室紹介のポスター PDFを置いておきます。


http://www.g-expo.jp/

早川が共著として参画した論文が、米Science誌に掲載されました。
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/327/5972/1497?rss=1

本研究では、日本を含む西太平洋地域における岩盤河川の穿入蛇行地形に対する、豪雨頻度・台風頻度など気候の影響を空間解析により明らかにしました。
Scienceは、Natureと並び科学の分野で最高峰の学術誌です。

Science論文イメージ

トルコ共和国カイセリ県における研究活動についての連載記事が、山陽新聞に掲載されました。

「古代都市に挑む~トルコ遺跡調査隊同行記~」というシリーズで、考古学のチームに関する話題ですが、早川の行うレーザー距離計やGPSを用いた地形測量、GIS等を用いたデータの統合・解析についても言及されています。
また、それぞれの記事に連動した動画ニュースも山陽新聞ウェブサイトに掲載されました。以下はそのリンクです。

考古遺跡はむかしの人々の活動の跡であると同時に、いまの人々が集い、活動する場でもあります。
紙面の方では、こうした人間模様を伝えてくれる、とても貴重な記事となっています。

[関連リンク]

Hayakawa and Matsukura, 2009 - Geomorphology

ナイアガラ滝の後退速度に関する論文がGeomorphologyに掲載、出版されました。
Hayakawa, Y.S. and Matsukura, Y. (2009): Factors influencing the recession rate of Niagara Falls since the 19th century. Geomorphology, 110, 212–216. doi:10.1016/j.geomorph.2009.04.011

ナイアガラの滝は世界でもっとも有名な滝のひとつで、おそらく日本の皆さんもよくご存じかと思います。
北米大陸北東部にある五大湖のうち、東側のエリー湖とオンタリオ湖との間を南北に流れるナイアガラ川。
そのほぼ中間地点に、この滝はあります。
川がちょうどアメリカとカナダの国境となっていて、ナイアガラ滝の周りは観光地としてとても栄えています。
論文に載せた滝の写真は、カナダ側のスカイロンタワーという展望台から撮影したものです。
調査に行ったのが3月、まだ雪のちらつくオフシーズンだったので、いろんな観光アトラクションはお休み中でしたが、その分じっくりと調査することができました。

論文スナップショット

この滝は、かつて年間1メートル以上ものペースで削られ、上流のエリー湖に向かってどんどん後退していることが知られています。
古くから絵や写真、または測量図など、さまざまな資料が残されているのです。
しかし、19世紀以降、その速度は徐々に遅くなり、今では年間数センチ程度しか削られていません。
なぜ、滝は削られなくなってしまったのでしょうか?

ナイアガラ滝の高さは50mほどあります。
実は、この落差を利用して、水力発電が盛んに行われているのです。
滝の上流側の川から水を大量に引き込んで、滝の下流側にできた崖からその水を落として電力をつくる。
ダムなんか建設しなくても、もともと崖があるので、こうした発電はとても効率的です。
しかし、この取水が原因で、滝を流れる水が激減してしまいました。

滝は大事な観光資源ですから、今では、アメリカ・カナダ両国間の協定で、滝に流す水の最低限の量が決められています。
とくに、夏場の観光シーズンの日中は、毎秒約2800トン(普通の浴槽の約1万杯分)の水がホースシュー滝(ナイアガラ滝のカナダ側、メインの滝)を落ちるよう指定されています。
しかしこれでも、100年以上前の水力発電が始まる前に比べると、水量は半分以下に減ってしまっているのです。

水が減れば、当然、基盤の岩を侵食する力も落ち、滝が後退する速度は遅くなります。
滝を流れる水が人為的に減らされてしまった。だから滝の後退も遅くなった。
これが、従来の定説でした。

あたりまえのように聞こえますが、実は、これに加えて、ナイアガラ滝の後退速度を遅くするもう一つの要因があったのです。
それを定量的に明らかにしたというのが、この論文の主旨になります。

ナイアガラ滝が後退するにしたがって、滝はそのカタチを変化させてきました。
「ホースシュー滝」というその名がそれをあらわしています。
「馬蹄形」、つまり幅広く湾曲した形。
昔のナイアガラ滝はもっと平面形が直線的で、時間を追うごとにだんだんと今の形に近づいてきました。
すると、だんだん滝の落ち口(滝の肩、と言います)の長さが増し、たとえ同じ川の水量であっても、川の深さは徐々に浅くなっていきます。
水が浅くなると、今度はその河床にかかる負荷(水の重さ)が減り、結果として滝の侵食する力が減っていくのです。
これが、ナイアガラ滝の後退速度が遅くなった、もうひとつの原因。
人為的なものではなく、あくまで自然の変化です。

こうした二つの要因―人為的なものと、自然的なもの―を、あるモデルを使って定量的に、現場で取った岩石物性のデータや、記録にある水量や平面形状の変化のデータから分析したところ、ここ100年ちょっとの間、双方の要因が同時に影響していたことが判明しました。

実際、水量そのものが劇的に減っているので、この影響はやはり大きく、滝が湾曲することによる侵食力の低下は、副次的な原因となります。
しかし後者を無視することはできず、逆に、水の減少だけでは現在のナイアガラ滝がこれだけ侵食が遅くなったことを説明できなくなってしまいます。
従来の定説は、間違ってはいませんでしたが、やはり説明としては不充分だったということになるでしょう。

とりあえず、今現在の水量と滝の形では、ほんのちょっとずつしか滝は削れていきません。
将来、いつかは上流のエリー湖まで侵食が進んで滝もなくなってしまうのでしょうけど、それにはずいぶんと長い時間がかかるようです。
今後数百年は、ほとんど今のままの形で滝の観光ツアーを楽しむことはできそうですね。
それに、いくら水量が減ったといっても、夏場に立ち上る水煙は何10km離れた場所からも眺めることができます。
やはり、ヒト一人のスケールからすれば、壮大であることに変わりはありません。

アメリカ・カナダ旅行の際には、ぜひ立ち寄って、その壮絶さを肌で感じてみてほしいスポットです。

2017年1月
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